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福島原発避難者・南相馬訴訟判決に対する声明



福島地裁・いわき支部

福島原発避難者訴訟判決に対する声明


本日、福島地方裁判所いわき支部において、2011年3月11日の福島第一原子力発電所における事故(以下「本件事故」という)による避難者が受けた被害について、判決が言い渡された。

 本件福島原発避難者訴訟(以下「本件訴訟」という)は、本件事故による避難指示により、住み慣れた故郷(ふるさと)を追われた南相馬市原町区に住んでいた被害者が、東京電力を被告として提起した訴訟であり、5年余の審理を経て今日の判決に至った。その間、事故の発生から起算するならば9年以上に及ぶ避難生活は、原告らにとって極めて厳しい毎日であり、司法的救済を待ち望んできた原告らにとって、この判決は大きな意味を持つ。

1 東電の法的責任

 判決は、原賠法3条を根拠に、被告の賠償責任を認めた。しかし、原賠法3条の無過失責任規定は、被害の救済のために、過失の立証を不要としたものであって、その適用は、被告に過失がないことを意味するものではない。本件においても判決は、特別法たる原賠法の存在を理由に民法709条の適用を認めなかったが、そのことによって東電の過失の存在が否定されたことを意味するものではないことが、留意されるべきである。


2 ふるさと喪失損害

 本件訴訟における重要な争点は、原告らが被っている「ふるさと喪失・変容損害」の評価とその救済である。すなわち、原告らはそれまで生活していた地域社会での生活を丸ごと奪われ、地域コミュニティとの繋がりと、これによって互いに享受し合っていた地域の諸機能、「生活と生産の諸条件」というべき様々なかけがえのない価値、生活上の利益を失った。そして、固有の文化や自然環境を含む、地域での生活と繋がりを失ったことによる原告らの喪失感は重大である。このような被害は、わが国の公害においても類例のない未曽有の事態であり、これらの無形の経済的損害と精神的苦痛は、まことに甚大なものである。

 判決は、このような「ふるさと喪失・変容損害」の発生を認め、これに関する慰謝料の支払いを命じた。

しかしその金額は、原告らの受けている被害の実態と請求額に照らして、著しく不十分なものにとどまり、これでは損害の回復をなし得るものとは評価できない。地域との繋がり、地域で生活することの価値という重大な権利利益の侵害の発生を認めながら、こうした水準の損害算定にとどまるという矛盾した判断は、司法の役割を放棄したものとして、批判されるべきである。


3 避難慰謝料

原告らは、本件事故発生以来の避難生活が続く中で、避難先において強いられる不自由、不安、不便、心身の苦痛等の著しい日常生活阻害を受けている。それは、避難先住居での生活の限界、見知らぬ土地での生活上の不安、被ばくによる不安・差別、仕事の喪失、家族の離散、被害者同士の軋轢など、生活のあらゆる場面に及ぶもので、いずれも深刻な被害である。

被告は、このような避難生活による精神的損害について月額10万円の支払をしてきたところであるが、上記のような深刻な被害の実態に鑑みて、到底十分な賠償とは言えない。しかも、避難指示の解除に従って、その支払いさえも打ち切られているところである。

判決は、上記のような被害の実相を正しく受け止めることなく、政府の政策と指針に追従し、避難慰謝料の増額を認めなかったものであり、司法の役割を果たさない姿勢に終始した。


4 結論

以上のとおり、本件判決は、本件事故による著しい権利侵害と甚大な被害の実相を正面から受け止めることなく、損害算定においても、原告らが求めた救済の水準に到底及ばない内容にとどまった。

このような判決は、被害の切り捨てと帰還の強要を進める政府の政策に追従し、司法の役割を放棄したものという、最大限の批判が相応しい。

原告らと弁護団は、この判決を決して受け入れることなく、引き続き公正な司法判断を求めて闘う所存である


以上


2020年11月18日

福島原発被害南相馬弁護団

福島原発被害南相馬原告団

南相馬判決・新聞記事5社分
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