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3・26 いわき市民訴訟判決


1,いわき市民訴訟とは

 いわき市は、福島第一原発の南側に位置し、最も近いところで同原発から30キロあまりに位置します。避難地域として指定は受けませんでしたが、事故の影響を少なからず受け、生活は大きく変容しました。命と健康に対する不安が顕著にあらわれ、従来出来ていたことが多くできなくなりました。

いわき市民が安心して住み続けることができるいわき市、相双地域の多くの被害者のみなさんを受け入れてともに生活できるいわき市。そんないわきの確立をめざし、いわき市民が集団で生命、健康への心痛を被害として訴える「いわき市民訴訟」が立ち上がったのは、2013年3月11日でした。

 この訴訟は、2013年9月19日に第1回口頭弁論、2019年1月から立証段階に入り、原告本人尋問を30名程行い、2020年3月16日には、高木竜輔准教授の専門家証人の尋問を行いました。長い裁判でした。

そして、本日21年3月26日、ようやく地裁判決となったものです。

2,国と東電の責任が明確に認められる

 判決は、国の規制権限不行使の違法性に関し、2002年「長期評価」について、その後の貞観津波の調査等の知見の蓄積を踏まえれば、取り込むべき知見であったとしました。そのうえで、経済産業大臣の不作為は、2009年8月の時点で、審議・判断における著しい過誤、欠落があったものと認定し、国の国賠法上の責任を認めました。

 また同じく東電の過失も認めました。

 このように判決は、国と東電の法的責任を明確に認めた点に第一の特徴があります。

 同種訴訟で国の責任を否定する判決も多く出されている中、国も自らに責任はないと開き直った対応をしています。国の責任を認めた判断は、とても大きな価値があります。

3、いわき市の受けた被害と市民の被害を認定

 そして、いわき市の2011年3月及び4月の状況について、「放射線ひばくによる健康被害の不安、恐怖を抱くことが当然の状況」であり、「混乱の程度は避難指示等の対象となった本件原発の20km圏内の地域と大きな差はなく」、「事実上避難を強いられる状況になったことは疑いようがない」と認定しました。

 また、「避難者の数も相双地区以上に多く、これらの状況は明らかに他の自主的避難等対象区域と一線を画している」と認定しました。

 判決の第二の特徴は、いわき市が、原発事故直後に、被害をもたらされた特殊な地域であったことを認めたこと、です。 

それを踏まえ、判決は、いわき市民の受けた被害として、2011年3月と4月については、一人あたり月6万円の合計12万円、2011年5月から9月までの期間については一人あたり月2万円の合計10万円、合計して22万円の賠償が必要である旨の判定を行いました。東電から8万円の賠償を受けている場合はそれが既払い扱いとなるため、14万円の賠償ということになります。

そのほか、事故当時の妊婦と子どもは、その放射線物質の悪影響を受ける感受性が強いことに照らし、これとは別に合計22万円の賠償が必要であること、屋内待機地域に指定された住民については、2011年10月から12月分までの賠償として一人あたり15万円の賠償が必要であると判定しました。その合計として、原告1371名分について、合計2億431万円の賠償を命じたのです。

 損害の把握の仕方や時期、金額といった点について、十分いわき市民の受けた被害の実状を反映したものかについては疑問は残ります。

 ですが、いわき市民の被害が、いわき市全体に広範に発生した被害であると認め、中間指針を越える被害を認めた点の意義は、とても大きなものがあります。

4,今後に向けて

 国や東電は、仙台高裁に控訴すると思われます。舞台は、仙台高裁に移ることになりましょう。

 私たちは本判決で前進したことは維持し、不十分と思われることは更なる前進を勝ち取るために、さらに尽力します。


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